ファッションという切り口で時代を読み解き、研究を続けられてきた中野香織さんに、「大人の美」についてインタビューさせていただきました。ファッションだけでなく、映画や香り、アートについても造詣が深い中野さんが追求する「美しさ」とは。


美しさを深化させていけるのが、大人ならではの強み


――　中野さんは『ダンディズムの系譜　男が憧れた男たち』や『スーツの神話』といった著書で、男性の美意識についても研究されていますが、男性がスパに通ってスキンケアをきちんとしていくことは、ライフスタイルとして定着する可能性はあると思いますか。

意識の高い男性は、すでに始めています。パワーゲームにおいて、とりわけ年を重ねてくると、肌の艶が服装以上にものをいう、ということが理解されるようになってきたのでしょうね。一般に広まるとすれば、まずはそこそこ経済力もあり、自分への投資にも関心の高い都市部の３０歳～４０歳の男性からでしょうか。いったん定着すれば、そのまま一生ライフスタイルの中に組み込まれていくでしょう。


――　男性にはどうあって欲しい、身だしなみの一部として、どういうところにこだわって欲しいなどあれば教えてください。

「肌の艶」「瞳の輝き」「歯の美しさ」「爪まわりの清潔さ」「髪の艶」。この五ポイントは、ごまかしようがなく、その人の普段の生活と社会に向き合う心構えがでます。服や持ち物にお金をかけるより、このような細部のグルーミングを日々の習慣にとりいれるほうが、確実に好感度を高めることにつながります。


――　持ち物ではなく、自分自身への投資ですね。メンズのビューティトレンドは今後どうなると思いますか。

男性はいったんその世界に入り込むと、マニアックに追求しますからね。ひとたびスキンケアにはまると、シェービング本格用品をそろえるだけでは物足りなくなり、オタクな美容器具やパックなどのスペシャルケアをひととおりそろえ、同好の士で集まって品評会などを始めたりして。いや、シューケアが好きな人たちの集まりを見ていると、マジでそう思います（笑）。


――　確かに、女性よりも「美」をとことん追求する可能性はありますね。女性男性問わず、中野さんから見て、YON-KAはどんな人にお薦めしたいブランドですか。

「表層的なトレンドに流されず、一番大切なことを見つめている人」にYON-KAを使ってもらいたいと思います。時代の流れやトレンドにまどわされず、本質とずっと向き合う人や、物事には長いスパンで取り組んでいく人というイメージがしっくりきます。大人の女性にもぜひお薦めしたいです。


――　ありがとうございます。YON-KA直営店である、レスパス ヨンカ表参道も大人の女性が通いたくなるサロンであり続けたいと思います。中野さんから見た、大人の女性ならではの「美しさ」はありますか。

肌のはりやみずみずしさは当然若い人にはかなわないのですが、周囲を見る力、周りへの気配りができることなど、美しさを深化させていけるのが、大人の女性ならではの強みではないかと思います。深み、奥行きのある人には「愛」を感じますし、そういった人を「美しいな」と思います。また、大人の女性の大切な要素として、努力することをやめない、柔軟に変わり続けていけるというのもはずせませんね。

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PROFILE：
エッセイスト 中野 香織

明治大学国際日本学部特任教授。
東京大学大学院修了、英国ケンブリッジ大学客員研究員を経て、文筆業に。フリーランスの服飾史家として活躍中の2008年、明治大学が国際日本学部を創設するにあたり、特任教授に就任。ファッション史や最新モード事情から人間の心理や社会を照射するエッセイに定評がある。ダンディズム、ジェントルマンシップに関する歴史研究においては第一人者。

著書『モードとエロスと資本』（集英社新書）、『ダンディズムの系譜　男が憧れた男たち』（新潮選書）、『愛されるモード』（中央公論新社）、『スーツの文化史』（『スーツの神話』（＜文春新書＞Kindle版）ほか多数。翻訳『シャネル　スタイルと人生』（文化出版局）ほか、『英和ファッション用語辞典』（研究社）の監修も。新聞・雑誌・ウェブ連載記事を月に７～８本書くほか、講演、トークショー、各種メディア出演多数。百貨店、美容院グループなど企業の研修講師も務める。最新監訳書『シャネル革命の秘密』（ディスカヴァー・トゥエンティワン）発売中